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SPIKE WARS -チャプター14 アドルフに告ぐ/アディダス「エース16+ジャパンHGプライムニット」(前編)

メーカー横断履き比べ企画第2弾

Icon kaneko 金子 達仁 | 2016/07/27
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〔CHAPTER14・アドルフに告ぐ(前編)〕

【登場人物】
聞き手(編集部)
マスターナガイ(永井秀樹=東京ヴェルディ1969=)

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◆最後に永井秀樹が手に取ったのはアディダスの「エース16+ジャパンHGプライムニット」。


──それでは、今回取り上げる最後のスパイク、アディダスのエース16+ジャパンHGプライムニットに参りましょう。メーカー希望小売り価格2万7000円、重量は290グラムでございます。
マスター永井「素朴な疑問があるんだけど」

──なんでございますか?
マスター永井「アンクル部分の形状。これって、意味あんのかな?」

──それはまあ、足首を守ると申しますか、こうやって包まれてることによって安心感を得る選手もいらっしゃるのではないでしょうか。
マスター永井「いや、それはわかるんだけど、俺がいいたいのは、こういう形状、日本でも必要なのかなってこと」

──と申しますと?
マスター永井「俺がクレモネーゼの入団テストを受けにいった時に一番感じた日本との違いは、当たりの激しさっていうか、はっきりいうとタックルの悪質さだったわけよ。日本だと、激しい中にもどこかフェアな部分があるというか、てめえの足へし折ったるわ的なタックルってまずないんだけど、イタリアだとそういうのがごくフツーにある」

──ああ、イタリアではございませんが、マラドーナがバルセロナにいたころ、対戦相手のDFが試合前に「あのインディオの足をへし折ってやる」と宣言し、実際に大怪我を負わせたことがございました。
マスター永井「インディオってマラドーナのこと?」

──といいますか、純粋な白人種ではない中南米出身者を指す、スペインではわりとポピュラーな差別用語でございまして。ちなみに東洋人に対する蔑称は“チノ”。中国人という意味でございます。
マスター永井「へえ~」

──でもって、世界の至宝を抹殺しかけたそのアンドニ・ゴイコチェアという選手、後に年代別スペイン代表の監督にまで上り詰めました。悪質な反則というものに対する考え方が、確かに日本と西ヨーロッパでは違うかもしれません。
マスター永井「でしょ。で、そういうところでプレーするのであれば、アンクル部分がこういう形状のスパイクもありかなと思うわけよ」

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マスター永井「今回の履いたモデルの中で一番幅が広い」


──なるほど。そういえば、マスター・ナガイと同郷で、かつ同じ指導者に育てられた日本代表の清武選手は、ブンデスリーガでこのモデルを使用しております。
マスター永井「うん。だからヨーロッパでプレーしてる選手がこれを履くのはわかる。でも、それほど悪質なタックルのない、かつヨーロッパより相当に蒸し暑い季節の長い日本で、これだけ熱のこもっちゃう形状のスパイクを履きたがる選手、どれだけいるのかな、とは思う」

──ただ、寒い季節や、足首付近に故障を抱えているような選手にとっては、かなりありがたいモデルなのかもしれません。
マスター永井「ま、それはわかるんだけどね。じゃ、採点に行きます。まずフィット感。3・5点。正直、幅の広さに驚いてる。昔はアディダスのスパイクっていうと、プーマほどじゃないにせよ、アシックスなんかに比べると明らかに細かった印象があるんだけど、このスパイクに関していうと、今回の履いたモデルの中で一番幅が広い」

──メーカーによっては、最近の日本人の足型は欧米型に近づいているというか、はっきりいうと細くなっている、と考えているところもあるようですが。
マスター永井「このスパイクは相当に幅広だけどね。重さについては4点。290グラムというスペックを聞いただけで、若い選手の中には拒否反応を示しちゃう子がいるかもしれないけど、俺的には何の問題もなし」

──カカトのホールド感については?
マスター永井「このあたりはさすがにわかってるなって造りだな。4点。いろいろなスパイク履いてわかってきたんだけど、この部分が一番メーカーの歴史や伝統みたいなのがみえるとこかもしれない。プーマのエヴォスピードなんか、お前大丈夫かよってぐらい軽量化のためにいろんなところを削ってるけど、カカトのホールドだけはちゃんとしてたから」

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マスター永井「中村俊輔選手なんかは履きたがらないんじゃないかな」


──ソールのグリップ力は?
マスター永井「4・5点。配置のバランスもいいし、足裏から突き上げてくるような感じもまったくない。安心して履ける感じ」

──走りやすさ。
マスター永井「問題ないだろうね。4点。というか、こういうところに問題があるようなスパイク、アディダスからは出てこないと思う(笑)」

──キックフィールについては?
マスター永井「引っ掛かりを覚えるとしたらそこだね。正直、あんまりいい感じはしない。3・5点。なんていうか、繊細なボールタッチに応えてくれるタイプのスパイクじゃないような気がする。憶測で申し訳ないんだけど、たぶん、中村俊輔選手なんかは履きたがらないんじゃないかな」

──今後、彼の足元にも注目してみることにします(笑)。デザインについて。
マスター永井「5点。間違いなく目を惹くし、誰が見てもアディダスのスパイクを履いてるってことがわかる」

──耐久性については?
マスター永井「まず2万7000円という定価からして、耐久性とかを重視したモデルじゃないとは思うんだけど、もし長持ちさせたいなって考えたとすると、ネックになるのはアンクルの部分だと思う。他の部分が壊れるより先に、ここがヘタッちゃいそう。2点」

(以下次号へ/取材協力・東京ヴェルディ1969)