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ユニフォームデザイナーの想いとは 「Vol.2:ビームス ジャパン×名古屋グランパスのコラボユニフォームについて」

サッカー日本代表のユニフォームが新しいデザインとなり賛否両論がでているのは周知の事実だろう。そんな中、アパレルメーカーなどがチームとコラボして、ユニフォームをデザインしている事例も出てきている。今回はシント=トロイデンと名古屋グランパスのコラボユニフォームをデザインしたビームスのデザイナーである水尾さんに、どんな想いやコンセプトでデザインをしたのか聞かせて頂いた。

Icon 16466945 810048175800857 1247399717 n 菊池 康平 | 2019/11/28
Vol.1はこちらから

――続いて名古屋グランパスのユニフォームについて聞かせてください。   

水尾:グランパスさんもカラーはバーバリアンレッドという指定の色がありました。今回は「鯱の大祭典」というイベントの記念ユニフォームでしたので、シャチ感を全体的にデザインへ取り入れました。     

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去年も「鯱の大祭典」をやられていて、その時は黒ベースのユニフォームだったと聞いております。   

今回はフィールドプレーヤーがバーバリアンレッド、ゴールキーパーが黒になった形です。   

――この胸周りの部分は茶色ですか?   

水尾:これはエンジですね。我々の方からの提案で同系色といいますか、エンジでこういった鯱の体の模様を想起させるようなデザインをモチーフにしています。       

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この曲線が鯱の頭の部分のイメージです。(TOYOTAのロゴの上のあたり)   

本物の鯱の目の横に丸い柄があるんですよ。それをアイパッチといいまして、両肩の楕円はそれを表しています。   

鯱の背びれの後部の腰のあたりに特徴的な柄が入っていまして、サドルパッチと言います。そのサドルパッチをユニフォームの背中の下のあたりに入れています(下の写真参照)     

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グランパスくんというマスコットのお尻にもこのサドルパッチが入ってるんですよ。そこにもリンクしています。   

――かなりのこだわりを感じます。   

水尾:シント=トロイデンとグランパスは同時に進めていましたが、シント=トロイデンさんは全てお任せみたいな形で、グランパスさんとは結構いろいろなやりとりをして議論を重ねて、このデザインにいきつきました。

素案を20以上作り、その中からグランパスさんに5~6のデザイン案を出しました。   

今回は「鯱の大祭典」と同時期にビームス ジャパン主催の「大名古屋展」というイベントがありまして、その担当チームのスタッフにも「どっちのデザインがいいかな?」などと意見を聞きました。  

――ユニフォームのデザインをモチーフにしたTシャツを会場で配られたんですよね?   

水尾:ユニフォームは全部で4試合着て頂き、Tシャツは2試合に分けて合計で60,000名様に配りました。

――このゴールドはどういうコンセプトですか?   

水尾:こっちのゴールドは金のシャチホコをイメージしています。これはあまりメインで目立たないように、あくまでも鯱のモチーフを前面に出して、サブテーマで金のシャチホコのゴールドが要所要所に入っているんです。   

――面白いですね!   

水尾:名古屋=金というイメージもあるじゃないですか。意外とこの脇からパンツに伸びているサイドのラインがフィールドで映えるんですよ。     

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このラインがシャツとパンツに一体感をもたらし、実際にフィールドで着用し躍動する選手をみると、このポイントがすごく効いていました。     

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「鯱の大祭典」でこの3つの市がグランパスのホームタウンです。愛知県の名古屋市、豊田市、みよし市です。名古屋市にはパロマ瑞穂スタジアムがあり、豊田市には豊田スタジアムがあります。   

その期間中は市役所の方たちにも配布されたTシャツを着て頂いていたみたいです。地域創生の1つと言えますね。我々の「大名古屋展」は名古屋を盛り上げるという意味合いがすごく大きい施策なんです。   

――名古屋とビームスさんには強い繋がりがあるんでしたっけ?

水尾:名古屋には4店舗あります。ビームスは色々な都市に店舗がありますが、名古屋には早い段階から出店していました。   

名古屋のスタッフはビームス愛も名古屋愛も強いんです。強過ぎるくらいに(笑)   

今回は「鯱の大祭典」用に金のグランパスくんの着ぐるみが作られました。スタジアムにも来てましたし、「大名古屋展」にはビームス 名古屋にも来てくれて盛り上がりました。   

――ゴールキーパーのユニフォームもコンセプトは同じですよね?  

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水尾:そうですね。背面の尾のモチーフデザインもついてますよ。

――デザインするにあたり苦労はありましたか?   

水尾:グランパスさんのこだわりや歴史もあったので、より良いものを作るために何度か話し合いましたよ。   

――一緒に作り上げていくようなイメージですかね。ビームスさんがJリーグチームのデザインをするのはグランパスが初めてですよね?   

水尾:そうです。   

――アパレルをきっかけにサッカーを知ったり、「このユニフォームを着たいから観戦に行こう、サッカーをしてみよう」となれば素晴らしいですよね。   

水尾:そうなって頂けると嬉しいですね。ビームスとしてチームにどういう良い効果を波及できるかというと、ビームスをきっかけにビームスのファンがサッカーに目を向けていただけるようになると良いですね。

――水尾さんはサッカーをやられてるんですか?   

水尾:高校3年生まではサッカーをやっていました。今はやっていないです。フットサルも10年くらいやってないんですよ。   

――社内にもサッカー好きの方は多いんですか?   

水尾:サッカーと野球は多いですよ。社内にサッカー部も昔からありますしね。社内で「グランパスのファンなので嬉しいです」と声をかけられたり、「ベルギーのチームのデザインをやるなんて凄いですね」と言われたり反響がありました。   

スポーツが絡むとファンの方がいたり、付随した目に見えるものも多いので、自分がやったことの評価がダイレクトに返ってきて、やりがいがすごくあります。

――水尾さんがデザインされたユニフォームをスタジアムで親子で着ていたりすると嬉しいですよね?   

水尾:この間も家族で着頂いているファンをお見かけしました。子供2人が大きいサイズのユニフォームを引きずりながら着てくれているのを見て、すごく嬉しかったです。   

――カッコいいユニフォームを着るとサポーターも選手もテンションが上がって、嬉しいですもんね。   

水尾:Jリーグの全チームで、同時期にこのチームはビームスと組んで、あのチームは〇〇と組んでユニフォームを作るなど、お祭り的なイベントをやるなんていいですよね。   

――面白いですね!アパレルコラボマッチデーみたいな形ですかね。どこかしらのアパレルメーカーなどと必ず組んで、そのユニフォームで試合をしたら、デザインのレベルも上がってきそうですよね。   

水尾:どちらかと言うと僕が好きなのは王道的なデザインですが、奇をてらって色んなことを仕掛けてくるアパレル(チーム)もあるでしょうし、それが勉強にも刺激にもなるので、そういうのが出来たら面白いですよね。

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(了)  

写真:菊池康平