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本田千尋の『フロム・トレーニングセンター』vol.10 ”闘牛士”マリオ・ゴメスが履くナイキ『ハイパーヴェノム ファントム Ⅲ DF』

金子塾卒業生にして、現在はドイツに拠点を置くスポーツライター本田千尋のちょっと変化球な企画。ブンデスリーガのスターはどんな音楽で気持ちを高め、どんなクルマで移動時間に鋭気を養い、そしてどんなスパイクで闘っているのか。トレーニング・センターからのダイレクト・レポートをお伝えします。

Icon img honda600 本田 千尋 | 2017/01/30


流れ着いたベシクタシュで、ナイキ『ハイパーヴェノム ファントム Ⅲ DF』を履いたマリオ・ゴメス。闘牛士を振り切った猛牛のように暴れた。
 

トルコ・スーパーリーグ15/16シーズン、33試合に出場して圧巻の26ゴール。第33節のオスマニスポル戦ではダメ押しの3点目を決めて、ベシクタシュJKを7年ぶりのリーグ優勝に導いた。  

「ベシクタシュはタイトルに相応しい。僕たちは素晴らしいシーズンを送ったね」  

“悪童”バロテッリの残酷な一撃で、ドイツ代表のEURO2012は終わった。ウクライナを後にし、ギリシャを退け、ポーランドの首都で迎えたイタリアとの準決勝。ゴメスは前半だけで交代を告げられた。  

“死のグループ”で優雅に舞った闘牛士は、仲間を決勝に導けなかった。  

夢はいつも唐突に終わり、気付けば苦難が始まっている。  

バイエルン・ミュンヘンに戻ると、クロアチア人の新参者にポジションを奪われ、活躍の場をフィオレンティーナに求めた。しかし度重なる怪我に悩まされ、2シーズンで挙げたゴールはわずか7。あげく、ブラジルW杯を戦うドイツ代表から落選した。
 

愛車は『メルセデス・ベンツ SLS AMG』だ。見た目の美しいV型8気筒エンジンは571PS。ドライサンプ方式のFFミッドシップ・エンジンで安定した運動を実現し、ガルウイングドアが開けば、そのまま空に舞っていけそうだ。  

もう後がなかった欧州の最東端で、ゴメスは、まるで愛車に乗ったような本来のパフォーマンスを取り戻した。起死回生のトルコ・スーパーリーグ得点王は、EURO2016を戦うドイツ代表に招集され、フランスに向かう。
 



復活の象徴となった『ハイパーヴェノム ファントム Ⅲ DF』。オレンジとライトグリーンが眩しい。

TOP写真/清水知良